こんにちは、香華殿の村井です!
私は仕事柄「葬儀」「お葬式」についてインターネットで検索する機会が多いのですが、「お葬式って必要なの?」「火葬するだけで良いんじゃない?」と言う意見を目にすることがたびたびあります。
実家や本家に仏壇はあるけど自分には信仰心もないし、死んだら終わりだと思っているから供養の必要性も感じていないという方は案外多いのかもしれませんね。
私もこの仕事を始める前は「葬儀は不必要」とまではいかなくても、形式的にするものだろうし、お金をかけるのはもったいないのではないかなとぼんやり思っていました。
そもそも私には、本当に身近で大切な人を亡くした経験がなかったのです。
そんな私ですが葬儀社に入社して実際に葬儀を担当している先輩達と会話をする中で、お葬式に対する意識が少しずつ変わっていきました。先輩達の言葉から、「何のために葬儀をするのか」ということを考えるきっかけを与えていただいたからだと思います。
そもそも「お葬式」は誰のためのもの?
今の私は、「何のために葬儀をするのか」を考える時に大切なのは「誰のための葬儀なのか」を考えることだと思っています。
お葬式は故人のためのものでしょうか?それともご家族のためのものでしょうか?ご親戚やご友人など故人が生前関わってきた方たちはどうでしょう?
そう考えた時、お葬式は故人のためのものであり、ご家族のためのものであり、ご親族やご友人のためのものでもあると言えるのではないでしょうか。
ここからは「故人」「家族」「親族・友人」の3つの視点から、葬儀の必要性について考えていくことにします。
「故人の視点」から葬儀を考える
亡くなる本人がどんな葬儀を望むのか、それは結局そのご本人にしかわからないことです。
それこそ「焼くだけでいいよ」「派手なことはしたくないから身内だけでして欲しい」と思う方もいれば、「親族に恥ずかしくない式にして欲しい」「友人や知人・仕事関係の方にも来てもらいたい」と思う方もいらっしゃいます。
故人が歩んで来た人生の中で、周りの人との関わりをどんな風に思い、どんなお葬式を望んでいるのかを推し量ることは難しく、どんなお葬式を希望するのか前もって話し合っておくことが大切です。
とは言え、生前にお葬式について話し合うことは難しいという方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合は、有名人が亡くなった時の葬儀の様子などを見て「立派なお葬式だね」「弔問客がたくさん来てくれたら嬉しいよね」「私は家族だけのお葬式が良いと思う」など自分から葬儀に対する考えを話すことで、相手の考えを引き出すこともできるのではないでしょうか。
いずれにしても、折に触れ日常の中で会話をすることは、お葬式に対する思いや考え方を知る手段の一つだと思います。
それでは、故人の視点から考えた葬儀にはどんなものがあるでしょうか。以下に実例をあげていきます。
「故人の視点から考えた葬儀」一例
・にぎやかなことが好きだったから家族や親族以外の一般会葬者にも参列してもらう。
・社交が苦手だから家族だけでゆっくり見送る。
・昔からお付合いしているお寺があるので、お葬式にお呼びする。
「家族の視点」から葬儀を考える
次に「残された家族が故人とお別れするための葬儀」という視点で考えてみましょう。
大切な人を失った悲しみ。それは経験してみないとわからないことだと思います。
死んでしまったらもう本人はわからないから、葬儀に何をしても故人には関係ないと思う方もいらっしゃるでしょうし、まだ近くにいて家族を見守っていてくれると思う方もいらっしゃるでしょう。
死に対する考え方は人それぞれですが、大切な方の体がまだ残っていて、その亡骸と過ごすことが出来る最期の時間が「葬儀」だということに変わりはありません。最期にしたいこと、してあげたいことは何でしょうか?深い悲しみの中にあっても、それを考えることは後悔を残さないためにとても大切なことです。
そうは言っても「あれもやってあげたい」「これもしてあげたい」とお金を掛け過ぎて、後々別の意味で後悔することも避けなければいけません。
また、家族と親族の間で葬儀に対する考え方や認識にずれがあると、トラブルがおこる原因になりがちです。例えば家族が無宗教の葬儀を希望して行い、それに対して親族が異を唱えて関係が悪化する。親族を呼ばずごく近しい家族だけで葬儀を行ったことで、親族から不満を言われる。
「家族のための葬儀」を考えた場合、親族との関係がこじれて結果的に家族が不愉快な思いをする葬儀は避ける必要があるといえるのではないでしょうか。
「家族の視点から考えた葬儀」一例
・お風呂に入りたがっていたから洗体湯灌(実際に湯船を使ってご遺体を清める湯灌)をさせてあげたい。
・好きな色のお花で祭壇をかざってあげたい。
・お洒落な人だったから最期はお気に入りの洋服を着せてあげたい。
・家族と親族の間で後々トラブルがおこらないよう、宗教宗派や参列範囲の確認をしっかり行う。
「親戚・友人の視点」から葬儀を考える
家族に比べて関係性が浅いと思われがちなご親戚やご友人ですが、それぞれに故人の人生を支え、長い時間を過ごして笑い合った仲間です。最期のお別れがしたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。故人にとって人生の彩ともいえる方々が不便なくお別れできるような葬儀とはどんなものでしょうか。
「親戚・友人の視点から考えた葬儀」一例
・式場は参列人数に適した大きさを選ぶ。
・車いすで参列する方やお子様連れの参列者がいる場合、そのような方々も利用しやすい式場を選ぶ。
・必要であれば駐車場の広さを確認しておく。
・通夜振舞いでは美味しい食事を用意する。
※最近では親戚や友人を呼ばず近しい身内だけで行う家族葬も増えていますが、故人がお付合いしている方が多かった場合は家族葬が終わった後に自宅への弔問が増えご家族の負担が大きくなる傾向がありますので、葬儀社に事前相談をして家族葬・一般葬を決めることをおすすめします。
終わりに
ここまで、故人・家族・親戚や友人の3つの視点で葬儀について考えてきました。
この全てを満たす葬儀が出来ればベストかもしれませんが、それは難しい場合も多いと思います。
それぞれの視点から、必要なこと、したいこと、無理なく出来ることを選び、葬儀について考えることで「葬儀は必要なのか」という問いに答えが出るのではないでしょうか。
お葬式は不思議なものです。お金をかければ良い葬儀が出来るというわけではなく、お金がないから満足に送ることができないということでもありません。
今回ご紹介した3つの視点を持ってお葬式について考えていただくことが、後悔のない葬儀をするためにお役に立つことを心から願っています。